予測困難な社会での美術教育
⼤学美術教育学会理事⻑ ⼩池 研⼆(横浜国⽴⼤学)
学会員の皆様におかれましては,美術及び美術教育の発展のためご尽力いただいていることと存じます。この度,理事長という大役を務めることになりました横浜国立大学の小池研二と申します。大変微力ながら皆様のために努力していく所存です。
私はこれまで学会誌編集の仕事に何年か関わりました。副委員長を始め委員の先生方,中西印刷の担当者と共に査読業務等編集に関する様々なお仕事を一緒にして参りました。いずれも間違いの許されない大切な業務でした。この仕事を通じて多くの先生方の力を結集して学会誌ができあがっていることを知りました。この学会誌編集という業務を通じて,本学会は会員全員が文字通り力を合わせてつくり上げていくものだと改めて思った次第です。また,その業務の中で会員の先生方の多くの論文を目にする機会を得ました。研究者,教育者,表現者として精魂込めて書き上げた論文を拝読し,その内容に圧倒され,自分は本当に努力しているのかと改めて考えたことも多々ありました。このような全国の先生方の日々の努力によって美術教育研究が成り立っていることを感じました。学術研究は決して派手ではなく,長年の努力を一つ一つ着実に積み重ねていくことが大切だと考えております。皆様が安心して研究が行える環境を少しでもより良くすることができればと思っております。
一方,現在の大学や各学校の研究や教育環境は厳しさを増しています。大学ではご存じの通り,研究費等の削減,教員養成系の退職教員不補充による教員数の減少等切実な問題が続いています。幼保,小,中,高校等の各教育現場においても児童生徒数の減少,教員の年齢構成の不均衡,教員へのなり手不足等いずれも深刻な状況です。どれをとっても簡単に解決できる問題ではありませんが,学会からの提言等も含めて積極的にこれらの問題について意見を述べていくことも大切な責務だと考えます。昨年度も関係の先生方のご努力で美術教育学系学会や関係諸団体,企業が共同して次期学習指導要領改訂に向けて提言書を取りまとめていただきました。
現在,学習指導要領の改訂が行われており,今年度末には次期学習指導要領が示される予定です。どのような内容になるかは未知数ですが,いくつかの変更点はあるにせよ,これまでの流れから大きな逸脱はないと考えています。思えば現行の学習指導要領では,2030年の社会に生きる子どもたちがよりよく生きるためにはどうすべきかを考えて作られました。そしてこの10年で世界は,私たちが予想していた以上の変化を遂げたのはご承知の通りです。国際問題,自然環境,AI,格差社会等いずれも複雑な問いが私たちに突きつけられています。10年先,20年の社会が予測困難であることは10年前と変わりません。そのような中で,子どもたちにどのような美術教育をしていくべきなのかを考えていくことは簡単ではないでしょう。しかし,これまでの先達が築いてきた成果をふり返り,日々の研究や教育,表現を続けていくこと,世の中に発表し続けていくことがこのような難しい時代に対する私たち研究者,教育者,表現者の取り得る有力な手段だと思います。皆様の堅固で豊かな研究,教育,表現活動こそが美術教育をより一層力強いものにしていくと信じております。これからもご協力くださいますよう,よろしくお願いいたします。





