令和2年度 代表挨拶

大学美術教育学会理事長 八重樫 良二(北海道教育大学)

 令和2年度の全国美術部門代表を務めさせて頂きます北海道教育大学、八重樫です。どうぞよろしくお願いします。今年度は新型コロナウイルス感染防止への対応に迫られる中での授業開始となりました。全国の学校が否応無く遠隔授業の実施に迫られる事態。教育のみならずその対応は社会全般に大きな影響が及んでいます。半年以上の期間が過ぎてなお今後が案じられる最中にあって、少しでも早くこの渦が収束することを願っています。
 改めまして。近年、多くの大学が既設の大学院組織を教職大学院とする改組に取り組んでいます。こうした大学教育を含む教育改革について書かれた図書の一つに遠山敦子氏が著した「こう変わる学校、こう変わる大学」があります。発刊当時、前文部科学大臣であった氏が、教育界にこれから起こる変化について書いたものです。その出版から既に16年が経ちました。その中には専門職大学院制度についても記されています。今になってその内容を読み解くなら教職大学院への改組は当時から既に予告されていたものと理解できます。このように過去を振り返って見ると、身近になって初めて気が付く出来事も川の流れを遡るようにどこからやって来たものか、分かることがあります。
 私が大学教員の職に就いてまもない頃。先輩から部門会員になることへの説明を受けても私にはよく分かりませんでした。美術部門とは何か。このことについて記した文章が学会HPのトップページに置かれている「日本教育大学協会全国美術部門と大学美術教育学会のあゆみ」です。かつて部門と学会の長を務めた東京学芸大学の増田先生から御寄稿いただき掲載しています。そこには部門と大学美術教育学会についての経緯が記され、その関係は私には水源を一つにする二本の川の流れのように映ります。この一文は新米の私が抱いた疑問に応えてくれるものであり、皆様にも是非ご覧いただけたならと願います。
 教職大学院への改組に伴い美術教育に携わる教育組織においては、教科専門の人員の希薄化が進むことが危惧されています。部門は教科専門の会員が多数であった状態で発足し、その状況は長く続いていましたが、今後はこうした変化とともに会員数自体の減少が予想されます。このように大学改革は部門組織にとっても密接して影響あることです。さらにはコロナ禍は様々に予期せぬ変化をもたらすのかもしれません。
 発足以来70年間に渡って、部門は美術教育と文部行政に対する共通の視座を得るべく活動を続けてきました。教員養成における美術教育に係るヴィジョンの構築と発信。留まることのない川の流れのよう、その活動を継続していくことが大切だと思っています。どうぞ会員皆様からのご協力をいただけますようお願いします。