令和元年度 理事長挨拶

美術教育学会の未来

大学美術教育学会理事長 佐藤 哲夫 (新潟大学)

 平成30年度、令和元年度理事長を務めさせて頂いている佐藤です。皆様もご存じのように、現在美術教育の学術的な学会は三つあり、大学美術教育学会は、日本美術教育学会、美術科教育学会と並んで、日本の主要な美術教育学会としての存在感と重要性を保持しております。その中での本学会の特徴は、ルーツが教大協美術部門と補完関係にある学会だということがあります。すなわち、教育系の大学、学部において美術教育を担う部署、昔からの典型的な言い方だと教育学部美術科となりますが、それを担ういわゆる教科教育の担当者と実技・美術理論など教科専門の担当者のどちらをも主要な対象者とする学会としてはじまったことです。現在は、私学や現場の教員、大学院生など広く美術教育関係者のための学会として活動していますが、「美術教育のための教科教育と教科専門である」という根本理念は、重要だと思います。

 教科専門に開かれた本学会は、そのせいもありもっとも会員数の多い美術教育の学会としてあり続けています。とはいえ本学会も、法人化以降の大学改革の流れの中で会員数の減少傾向は鮮明であり、今後もこの傾向は続くことが予想されます。総務局会議でも、今は学会の合理化の努力が実を結び、何とか予算的な安定を維持できる状態になっているが、その先は学会の存続が危ぶまれる事態に至る可能性大であるとの見方が大勢です。

 さて、皆様は三学会による「造形芸術教育協議会」をご存じでしょうか。2009年に発足し、2010年の第二回において協議会の「合意事項」が文章化され署名されています。その2.では、「本協議会は、美術教育関連の組織が結集して、美術教育を振興していくことを目的とする」とあり、その4.では、三学会の代表者等が集まり「連携の具体を協議する」ことが明記されています。平成28年に文科省に出された「美術教育提言書」は、関連8団体の連名による美術教育連絡協議会からの提言となっていますが、主導したのは三学会であり、前理事長の小野先生が代表として取りまとめたものであり、「連携の具体」の成果といえるものです。また、昨年3月に出版された神林恒道・ふじえみつる監修『美術教育ハンドブック』も同様の意味を持った成果です。

  今年3月の第9回協議会では、学会の統合を巡って意見交換がなされました。そして、統合のヴィジョンの共通認識、具体的な組織運営の在り方などを今後議論していく必要があるということで一致しました。本年度の協議会は、大学美術教育学会が幹事学会になっております。学会員の皆様にも、避けては通れないように思われるこの三学会の統合問題に関心を持って頂きますようにお願い申し上げます。また、ぜひ積極的にご意見やご提案を執行部へお寄せくだされば幸いです。