平成26年度 副代表挨拶

『全国美術部門の現在と未来』

平成26年度全国美術部門副代表  岩村 伸一(京都教育大学)

 

 日本教育大学協会(以下「教大協」)は、昭和24年11月15日に、「会員相互の協力によって、大学・学部の質的向上と教育に関する学術の発達を図り、もってわが国教育の振興に寄与すること」(規約第4条)を目的に発足しました。この協会は、「国立大学法人のうち教育に関する学術の研究及び教育者養成を主とする大学・学部を会員として組織」(同第2条)されています。「全国美術部門」は、この日本教育大学協会に置かれた19 ある全国研究部門の一つです。教大協には、教員養成系の国立大学・学部が組織加盟をしており、それらの大学・学部に所属する専任教員は教大協の会員になっています。つまり、教員養成系の国立大学・学部の美術関係講座に所属する教員は「全国美術部門」に属する会員となります。
 平成16年4月にすべての国立大学が、「国立大学法人」となり、法人化後はどの大学も目まぐるしく改革に追われ、そのことは「全国美術部門」の活動にも大きな影響を与えました。平成18年度から23年度の代表を務めた橋本光明元代表が「残念ながら18、9年度の旧体制下では、部門・学会の会員管理と会費収支等の事務処理などで大わらわであり部門活動の充実を視野に入れながらも取り付く島もない状態でした」(会報No.38)と語るように、平成20年度以降の新体制=総務局体制において、部門活動の復活は大きな課題でした。そのきっかけをつくったのが、平成21年度から始まった教科内容に関する検討会でした。

 平成21年度の愛知大会における部門協議会でのシンポジウム、平成22年2月26日に開催されたフォーラム「明日を創る美術教育」は、その成果を会員に示した場にもなりました。平成24・25年度の代表を務めた藤江充元代表は、「教育の危機が言われるなかで、美術教育が我が国の教育の振興にどのように貢献できるのかが問われています。この部門は、教員養成そして研修の当事者として、その問いに応えていくことが求められています。教科内容学の検討などもその一環です。そのためにも、もう一度、この美術部門の原点に立ち返る必要があります。」(No.39)、と述べています。まさに、部門の活動の取組の原点を示したのが、この「教科内容学検討委員会」でした。
 平成24年度から「特別課題検討委員会」と名称を改め、主に関東地域の教科専門担当者によって頻繁に検討会が持たれています。そして、3年間議論してきた図画工作科・美術科における教科内容の研究成果として、冊子『うみだす教科の内容学 図工・美術の授業でおきること』が刊行されました。
 「全国美術部門」では、地区ごとに様々な活動を展開しています。それらの活動は毎年、会報上にて報告していただいております。地区会から出された意見・要望等が全国大会の時期に合わせて開催される協議会で検討され、それを各種委員会でも検討することにより、部門全体の活動が活性化していきます。それぞれの地区の活動を充実さていくことが、部門活動の再生には欠かせないのです。それは、「全国美術部門」との一体化を図る「大学美術教育学会」の活動にも大きく影響します。部門と学会、ともに独自性を打ち出しながら、これまで以上に発展していくことを期待します。