平成26年度 副理事長挨拶

『大学美術教育学会の現在と未来』

平成26年度 大学美術教育学会副理事長  新関 伸也(滋賀大学)


 「大学美術教育学会」は、教大協の「全国美術部門」を礎に、部門会員の研究発表の場から発展してきた学会です。「開かれた学会」をめざし、部門会員以外の方も入会、発表できるようになり、現在に至っています。平成26年度の部門会員は327名、学会会員は744名と、半数以上が部門に属さない会員で占めており、日本の美術教育の中で最も人数が多い学会にまで成長しました。他の2学会に後れを取りましたが、「日本学術会議協力学術研究団体」に登録することができ、量、質共に社会に対して責任のある学会となりました。


 本学会は「全国美術部門」を母体にして誕生したために、事務局を各国立大学で長い間順次回しながら運営してきました。しかし法人化後、運営を担う各大学は多忙化し、人的にも余裕のない状態となりました。

 平成20年度以降、複数の大学教員等による総務局体制で運営を変更しましたが、職務を安定させることができず、ついに平成26年度、アウトソーシング(中西印刷に業務委託)に踏み切りました。導入初年度は、事務移行と運営の改革を同時に進めたことにより、会員の皆様には不便をおかけしたことと思います。諸課題も残されており、漸次解決していく所存ですが、学会誌『美術教育学研究』の刊行と全国大会の運営については、早急に改善すべき課題となっています。

 学会誌投稿は増加傾向にある一方で、大学の教科専門、教科教育の教員、小中高校教員、さらに博士課程に所属する院生など会員の多様なニーズによる論文に対して、適切な査読者の選定の難しさも露呈しているところです。また、論文の質保証や研究倫理等に抵触する投稿もあり、課題となっています。これらに対応するための一歩として「研究倫理規定」が必要と判断し、制定に至りました。

 他に実務面では、学会誌の査読や編集の業務の効率化のため、Web上で行う方法に取り組み、新規の論文からのJ-STAGE登録に向けて、論文の書式変更も行い、J-STAGEの審査を受けるなど、学術団体に相応しい体裁を整えるための手続きを進めました。さらに全国大会に関しては、中西印刷独自のe-naf+(オンライン大会登録受付システム)の導入、つまり、一部の大会運営業務をアウトソーシングし、開催大学の負担の軽減を試みた成果が福井大会となりました。事前登録数の大幅な増により、参加人数が予想可能となり、予算面で安心感を持って大会開催ができるようになりました。また、ポスター発表と展示は開催大学の業務負担を鑑み、実施の有無は大会開催大学に一任していくことにもなりました。

 今後の学会の活動では、三学会連携(美術科教育学会・大学美術教育学会・日本美術教育学会)が課題となります。中心となる組織が「造形芸術教育協議会」です。昨年8月に行われた第7回造形教育協議会では合同シンポジウムを企画し、平成27年3月8日に静岡で、「次期教育課程改訂に向けて美術教育研究は何を提起できるのか」をテーマに、三学会が共同でシンポジウムを行いました。ここでの成果はそれぞれの学会(大会)で引き継いでいくことを確認したところです。

 なお、平成27年9月20日(日)、21日(月)に横浜大会(横浜国大)が開催されます。美術教育の意義についての理解を深め、広く社会に存在をアピールしていく場になることを期待しています。