平成21年度 理事長退任のご挨拶

『浅春から長春を願って』

 

平成20年度大学美術教育理事長  橋本光明(信州大学)

 

銀ねず、薄紅、萌黄と、色とりどりに草木の芽がふくらむ季節を迎えました。春暖への自然の律動には及ばないものの本学会の拡充を目指した改革もようやく浅春に向かう頃となりました。

4年前は、冬天深林の暗闇に立つ心境でした。手探りで 細径を歩き始めましたが、このままでは、学会そのものも 間違いなく彷徨い低迷すると直感しました。直面する学会の課題についての打開策を一刻も早く講じる必要性から平成19年11月の兵庫大会の最終日の総会におきまして改革案を提出し、承認されました。

当時の状況を思い起こすと、総会に出席されていた会員の皆さまが、やつぎばやの教育改革の下で美術教育にとっては悲観的な材料が増しており、何らかの打開策を学会に求めていました。そうした会員の皆様の気持ちと拙い私の改革への提言とが一致したからこそ平成 20 年度からの2年間に大ナタを振るうことができました。

しかし、もとより非力でありますから多くの方々にお力添えをいただきながらの立ち回りでした。とりわけて運営・組織面では、中核的な役割を担う総務局の局長及び部長、理事の全面的なご協力がなければ、未だに冬深き時期 が続いたでしょう。初代総務局長の増田金吾氏、二代目の山田一美現総務局長、そして、山口喜雄部長はじめ新関、藤田、芳賀、三澤、大泉の 2年間担当の各総務局理事、内田、小泉、竹内の新総務局理事の各氏に厚くお礼を申し上げます。また、総務局が企画・運営に専念できたのは、新しく導入した外部委託による事務処理が円滑に行われたからです。担当の佐藤聡史事務部長、柳沢愛部員には感謝の気持ちで一杯です。

運営・組織の大幅な見直しは、本学会の内と外への充実を図るためにありました。そのために欠かすことのできない近々の課題として学術団体の登録がありました。昨年の秋に申請書類が整い提出をしましたので22年度中の承認 が得られるのを願っているところです。本学会には、教科専門担当教員が多く所属していることからポスター発表を20年度の高知大会から試行し、21年度の愛知大会からポスターセッションを本格的に実施しました。教科教育担当教員や学校教育で活躍されている教員なども含めた重要な制作活動・教育研究活動等の発表の場として定着させたいです。この発表の記録や報告の在り方についても今後検討をして本学会の特色の一つとして推し進めていきたいものです。関連する学会誌については、たってのお願いで3年間務めていただいた佐藤哲夫前委員長と最後の就任となった西村俊夫編集委員長の時代から新たな学会誌委員会をスタートさせました。新委員長の大嶋彰副理事長に引き継いでいただ きながら更なる充実をめざしています。査読者の登録制や査読システムの見直しなどによる質の向上を期待しています。学会誌担当の副理事長を1名にすることで増田新副理事長には、他の事業や企画で手腕を発揮していただいています。その最初の取り組みが2月のフォーラム開催であり、今後の学会活動の多様な広がりが楽しみです。

春を招く歴史的な出来事として美術教育に関係する3学会(日本美術教育学会、美術科教育学会、本学会)の連携協力があります。昨年 9月12 日(土)に京都で開かれた 3代表者(上記学会順:神林恒道会長、藤江充代表理事、橋本)による初会合で3学会による「造形芸術教育協議会」の設立を確約し、美術教育の重要性の啓蒙と存続、振興等で共通理解を深めました。

この結果、本年 2月11 日(木)に第2回の協議会が東京で開催され、3代表者に加えて学会順に大橋功氏、新関伸也氏の役員/金子一夫副代表理事/山田総務局長が出席しました。 協議により別頁に示す事項に合意し、署名・捺印の文書を取り交わしました。

こうしてようやく春光に輝く学会が見えてきました。安堵の気持ちで退任できます。ご支援、ありがとうございました。

 

(大学美術教育学会 「会報No.22」 平成22年3月発行)