平成20年度 理事長挨拶

『鉄杵を磨きつつ学会の解放性をめざす』

 

平成21年度大学美術教育学会理事長  橋本光明(信州大学)

 

本年度も「鉄杵を磨く」ように根気強く学会運営に取り組んで参りたいと思います。平成19年度の兵庫大会総会において学会改革を提案し、会員の皆様のご助言や励ましのお言葉を支えにここまでやってきました。

お陰さまで、20年度内に大きな鉄杵を磨き場へ運ぶまでにこぎつけました。このパワフルな活動ができましたのは、会員の皆様の温かい後押しと各理事や委員、総務局及び事務部全員のご尽力によるものと厚く感謝申し上げます。

2年目に入りましたが、本年度は、学会の将来展望を踏まえた改善や転換を図る必要があります。変改すべき点は山ほどありますからその項目を示すだけで1頁になります。紙幅が限られていますのでここでは、“学会の解放性”の1点に絞りまして所懐の一端をお伝えしながら挨拶とさせていただきます。

〈学会と部門〉 本学会員として活躍されている会員の4割余りの皆様にとって分かりにくいのが「部門」の存在です。6月に郵送しました通信である程度は読み取ることができたと思いますが、同じ学会員でありながら二つに分かたれていることが腑に落ちないという会員がいらっしゃることでしょう。

本学会設立の歴史的な背景から会員の半数以上が、「学会」と「部門」に所属しています。これは、本学会の特色であり、優れた知的・人的財産を有しており結集すれば価値ある成果を生み出すことが期待できます。また、国内の美術教育関連の諸学会の中で最大の会員数を維持しているのもこの「部門」、すなわち「日本教育大学協会全国美術部門」の基盤があるからです。

しかしながら組織基盤の上で外に開かれた学会としての働きは十分なものではありませんでした。両者の混淆から制度化された「名誉会員」は、学会の開放性が進むにつれてつじつまの合わないものになりましたが、思い切った取りさばきができないままでした。20年度にご退職される会員の方々を思いますと私自身苦渋の決断でしたが、改革期を節目として名誉会員制度を廃止しました。これにより退職される全ての会員の方々が、自らの判断で会員を継続し研究活動を行えるようにいたしました。

〈学会と私大〉 私立大学との関係については、20年程前から私大会員の特別会員制をなくしたり役員に私大代表理事を位置づけたりして一歩一歩の漸進を見ることができますが、組織・運営や研究面などにおける一体となった取組みは遅れているといえます。

そこで昨年度、2つの改善をしました。一つは、総務局メンバーに私大会員が入ることで私大代表理事とは異なる面から私立大学とのパイプ役になっていただくことにしました。二つめは、大会開催大学を開放することでした。開催担当ブロックを大ブロック制にする際に私大会員が多い地区においては、条件が揃えば私大での学会開催を実現できるようにしました。

この結果来年度は、武蔵野美術大学をメイン会場にして学会を開催することになりました。これにより本学会の解放性が具体化され、開かれた学会として発展・興隆する大きな礎になると思っています。

〈学会と学校〉 理論と実践の接点や融合等の開拓に視座した研究活動が益々重視されています。同時に、複雑多様化する教育課題に対応できる指導力を備えた教員の養成の在り方などが求められています。本学会は、この点から幼・保、小中高、特別支援等の実践研究や美術館・博物館等の教育活動や文化活動などに関わりをもち、その連携や充実を図るためにも学校現場や美術館等で熱心に取り組まれている方々に加入していただけるよう開放に向けた環境づくりをしなければなりません。

 その第一歩として愛知大会から非会員の方のポスター展示を企画して学会に参加する機会をつくりました。また、小中学校で活躍されています学会員2名の先生に総務局理事を委嘱して新風を吹き込んでいただいています。これら開放に向けて会員の皆様のご理解とさらなるお力添えをお願い致します。

 

(大学美術教育学会 「会報No.21」 平成21年8月発行)